失踪する話
涙は星になった。綺麗なものばっかりにまみれた世界で生きたいなと言った彼女が好んで口にしていた言葉だ。なやんでいるの。いいえ。つらいの。いいえ。ないているの。いいえ。涙は星になったから。それは彼女にとってのおまじないだったのかもしれない。パステルカラーの雰囲気を纏った彼女はそこから想像もつかないような、揺るがぬ芯を持っていた。
「人に迷惑をかけないこと」
それが信条だった。だれにも心配をかけずに、だれにも頼らずに生きることが美徳だと。だれにも頼らずに生きている様は痛々しくて、けれど美しくて、触れるのに恐れるほどだった。彼女はそんl美しくて儚くて、けれどしたたかにな姿で生きているのか、今はわからない。彼女はいなくなってしまったから。雪のように。飛行機雲のように。ほんの少しだけ、そこらじゅうに気配を少しだけ残して。答えはどこにもなかった。